50代、足していいもの、引いていいもの
おすすめ度 ⭐⭐⭐⭐
日経新聞で連載されている岸本葉子氏のエッセイ「人生後半はじめまして」を毎週楽しく読んでいる。その連載は現在も継続中だが、こちらの本は日経新聞の過去の連載や他の雑誌等に掲載されたエッセイをまとめた本。
岸本氏の仕事がらみの旅を含めた日常の出来事について書かれており、本当に普段考えたことや悩みを他人も読めるエッセイにしたという感じで、女性なら、そして若くて元気いっぱい!という女性でなければ共感できると思う笑。
この連載が始まったとき、「人生の後半」という言葉にどきっとした。岸本氏も40代始めに癌を患い手術、治療をされたとのことだが、私自身もそれよりも軽めの病気ではあるが入院、手術をし、その後の「人生の後半」が見えてきたというか、見据えて生きる心持ちになったように思う。
それまでは山を登るように、上を向いてまだ見ぬところへ向かっていた感じだったけれど、その後は折り返し地点を過ぎて先の道が見えていてそれに向かっていくという感じか。小さい頃に「死」を感じて恐ろしくて眠れなくなったり泣いたりしたことがあったが、もっと具体的に現実に迫ってきている感じがして、ふと考えると怖くなる。
とは言いつつも、岸本氏はその「後半」を意識しているというよりも、ほとんどは病気やそんな自分の立ち位置を忘れて、日常の些細なことやそれに執着する自分をちょっとおかしく振り返る。先ほど私も「具体的に現実に迫って」などと書いたものの、たまに感じる不調のとき以外は忘れていて自覚もない。
私はまだ50代ではないけれど、「今後の自分」を見てこのエッセイを読んだ。失礼ながらそれは反面教師であったりなかったり。年齢的には先輩なのに、なんだか一生懸命で微笑ましい。「足していいもの、引いていいもの」と題名にあるとおり、これはどうしようかなと足したり引いたり考えて行動して、若いときのように向こう見ずに行動するなんてことはない。でもそれはそれで楽しそうと思える50代の生活が書かれていてこんな生活ならいいかなと思える(今の自分でも思いますが、中身は外見ほど変わってない、若いときのまま!)。