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humhummの乱読日記

Kindle Unlimitedと図書館を利用して読んだ本の備忘録です。☆の数はあいまいでかなり主観的ですが、基本的に最後まで読み切ったおすすめの本を紹介しています。

The Culture Map: Decoding How People Think, Lead, and Get Things Done Across Cultures

 

📙 The Culture Map: Decoding How People Think, Lead, and Get Things Done Across Cultures

おすすめ度 ⭐⭐⭐⭐

ネットで評判の良い本だったので楽しみにして読んだのだが、私の期待していたものとは少し違っていた。著者のエリン・メイヤー氏はINSEAD(フランスの著名ビジネススクール)で教えていることもあって、もうちょっと体系的に異文化の理解について整理されたものが書かれているのだと思っていた。

本の始めのほうで中国の武漢出身の方とのコミュニケーションのすれ違いが起きたとき、専門家なのにまだこの理解の段階?と思ってしまった。Culture Mapという題名がついているが(翻訳は異文化理解力 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養)ひたすら著者の見聞きしたものが続く「私の異文化体験録」という感じで、この本はそれなりに厚さがある本なのだが、初めのほうを読んでいる段階でもしかして最後までずっとこれが続く?と少し恐怖に思ってしまった(実際続きます)。

私が良いと思ったのは、この本で提示されている言語や文化を捉えるいくつかの指標だ(Communicating/Evaluating/Persuading...)。主に企業のmanager向けに書かれていると思うが、自分が未知の文化に接したとき、その文化をどのように捉えればよいか頭の中を整理する指標として役立つ。そして体験談が本当に!!ひたすら豊富なことだ(それで星4つ)。ああ、こういうこともあるのか、と例えばインドネシアの方と会う前に予習しておけば役に立つし気づきを与えてくれる。ネガティブなことをアジア系の人(ここが曖昧なのだが)に伝える方法や思考方法の違い等も参考になる。アステラス等実際の企業の話もあり、方法論としては参考になる。

しかしながら、日本に対する推察は後付けというか個人的には何かしっくりこないところもあった(他の国のことはわからないので)。著者は海外生活が長いものの自国文化(アメリカ)の影響を受け続けていて、結局アメリカ人の視点から離れられていないように思う。正直に辛口に言うと、あまりフレキシブルでない印象。

日本語が相対的にhigh-context languageであることは否定しない。ただ、「足」という単語がlegとfootの両方の意味があるように、日本語は同音異義語が多いからhigh-context languageである(理由の一つ)というのはどうなの?と思った。日本語の「足」ってそもそも「足」全体を意味するのであって、英語のlegとfootの定義に縛られているわけではないし、イヌイットの雪を表す表現がたくさんあるというのと同じで(翻訳できない世界のことばはおすすめ、原書はLost in Translation: An Illustrated Compendium of Untranslatable Words from Around the World)、必要性によって生まれたただの固有の表現(文化)ではないだろうか。発音がしやすい言葉とか(日本語だと母音+子音の組み合わせ)にも起因するだろうし、日本語の場合high-context languageだから語彙が少ないって何か方向性が違う気がする。

(上記は重箱の隅をつつくような細部でそれほど重要ではないのだが、日本人(語)の説明に妙にひっかかってしまったので、書いたのだが妙に長くなってしまった)

以前インドの方と仕事ををする機会があったのだが、言語に加え何かしらgapを感じることが多かった。こちらの本では、アジアとしてIndiaもJapanも大きくひとまとまりにされており図表でも似たような場所に配置され、アメリカ人が読んだらインド人と日本人はほぼ同じような感じなのかと思うだろう(アメリカ人←→インド人より差はないのかもしれないが)。著者の提示している図表も著者の個人的な感覚による気がして(出典は書かれていない)まあおおまかには納得できるものの根拠がわからない。一体験→一結論という感じなのも結論を導くには物足りないように思う。

そうだったらエッセイっぽっく権威性を持たせないような(持たせたのかはわからないが)本の体裁のほうが良かった気がする。あるいは、自国以外の文化に接するbeginner向けだと思えば納得できるのだが、この本はそういう売り方ではなかったように思う。文化のすれ違いに対して著者の第一の感想も、自身の文化との比較で(this is different from my ownとか…それじゃ読者と同じでは)専門家としてもう一歩突っ込んでほしいと思った。

(自分の感じ方が違い過ぎるのかと思って原書と翻訳本両方のレビューを読んでみましたが、絶賛しているものと私のような感じとやはり割れてますね。個人的には、英語も平易なので豊富な実例集として目を通すのが良い気がします)