移転しました。

約3秒後に自動的にリダイレクトします。

humhummの乱読日記

Kindle Unlimitedと図書館を利用して読んだ本の備忘録です。☆の数はあいまいでかなり主観的ですが、基本的に最後まで読み切ったおすすめの本を紹介しています。

ケーキの切れない非行少年たち

 

📙 ケーキの切れない非行少年たち

おすすめ度 ⭐⭐⭐⭐⭐

帯のケーキが等分にカットできていない画像の印象が強く、非行少年は発達障害を持つ割合が高くそれら非行少年の実情を描写した本なのかと思って読み始めた。発達障害と知的障害の違いも何となくしかわかっていなかったというか正直突き詰めて考えたことがなかった。

この本でケーキを等分にカットすることについて書かれた箇所はわずかである。著者の宮口氏は本気で、本来なら福祉によって救われるべき少年院にいる多くの非行少年たち(少女も含む)を罪を犯す前に救いたい、現状を知ってもらいたいとこの本を書かれた。非行少年少女のことを真摯に思い現状不足している教材すら自ら作り上げている(ワーキングメモリを向上させる教材やさしいコグトレ 認知機能強化トレーニングは健常の子供がやっても良いと思った。非行少年のプライドを傷つけることなく、勉強のような押し付け感のない教材として完成させるまでどれほどの試行錯誤があったのだろうか)。ジャーナリストが取材して書いたものではない。児童精神科医として医療少年院に勤務した日々の実体験を伴った内部からの訴えである。

本気度は宮口氏の経歴にもあらわれている。難関大学の工学部を卒業後、さらに別の難関大学の医学部を卒業、精神科病院に勤務後、医療少年院に勤務、そちらへの関与も続けながら現在は大学教授、転部するほどの根性はすごい。そしてその後は一貫している。本の題名「ケーキの切れない」非行少年たちも、題名が出版社の狙いかややセンセーショナルなものとなっているが(事実ではある)現状を知ってもらいたいという目的を果たすものとなっており致し方なかったというか良かったと思う(実際私も気になって読むに至った)。

非常に読みやすく、土曜の午後に出かけがてら読み始めて、日曜の朝には全く飛ばし読みせず全体を読み終えた。印象に残ったのは、簡単な図を写すことができなければ(コグトレトレーニングにある「点つなぎ」ができない)漢字を覚えることなどできず、同じ形が見付けられないと(「形さがし」ができない)黒板に書かれたことをノートにも写すことができない。考えてみれば当然なのだが、今までそこまで考えが及ばなかった。子供たちと教育の現状を知るという意味でどんな方にもおすすめできる本だと思う。